蛇切岩 (与保呂)                                                                              

昔むかし、倉梯村字多門院小字黒部に姉が18才、『おまつ』といい、妹は15才『おしも』という

二人なかのよい美しい姉妹が住んでいたそうな。 


共に 黒部小町(くろぶこまち)といわれるくらい、村の若者たちはひそかに胸をときめ

かせていた。しかし、妨妹に恋いこがれる者はすべてはねつけられ、嫁にといわれてもことわられた。

それからは、姉妹には、わるいうわさが若者たちのあいだで上るようになった。これには大きな

理由があったのだった。姉妹はいつも あねさんかぶり のかたちで、こまめにはたらき、黒部から与保

呂の奥山へ草刈りに行くのじゃつた。そこには美しくすみきった池があり、姉妹はそのほとりでいつも汗

を冷し、一服するのがたのしみだった。


 ある日のこと、いつものように姉妹は奥山へでかけ、美しい池の水面に姿をうつしながら草刈りをして

いるうち、姉の おまつ が「ホッ」と一息ついで腰をのばしたときだった。おまつは、眼の前の向こうにあ

る姿を見つけた。そして、 おまつ のほほにはさっと、うすべにがさしたのじゃつた。 おまつ が、みとめ

たその姿は、この村では、見かけない若者であった。

その若者は、年のころ22〜3才で、くっきりと白い顔に星のようにかがやく目。その目は引きつけるように、
 
おまつ をじっと見つづけていたのじゃ。 おまつ は、かろうじてその若者の目をさけたのだが、その若者

の姿は、おまつの胸から永久にきえることのない姿となったのじゃ。

 
それからというものは、 おまつ は妹の おしも と一緒に出かけるのをきらうようになり、いつも一人で

出かけては美しい若者とお話をようになったのじゃ。そして、二人はいつしか結婚のやくそくま

でしたのじゃつた。そのときも、おまつにはすでに縁談が持ちあがっていたのじゃ。いとしい若

者がある身も知らず自分に結婚をせまる親がうらめしく、おまつはいつもことばをにごしていた。


 ある日、どうしてもこの池に出かけなければならないことになった。若者はいつものように池のほとりで

おまつ を待っていたが、妹の おしも がいっしょなのを見ておどろいたようにすがたを消したのじゃ。 

おまつ は、はっとしたがもうおそい。妹のおしもに、このひみつの恋をしられてしまったのじゃ。 おしも

も、このところ姉が、自分を池に連れて行かなくなった理由がわかったのじゃ。およめに行くのをいやがる

姉のきもちもわかっのじゃと、おまつは「今日かぎり家へは帰らないから、お前一人で帰っておくれ」といい

だしのじゃ。 おしも は、何のことかよくわからないが、姉をうしなうことはかなしいことじゃて。


おしも は、「何をいうのです。びっくりするではないですか。そんなことをいわないで私といっしょに帰って

下さい」と、姉にすがりついたのじゃ。おまつはどうあっても帰えらないといいつづけたのじゃ。姉妹が着物

のそでを引き合っている内、 おまつ は、さっと、そでをふりほどいたかと思うと、あっ、というまもなく身を

おどらせて池にとび込んでしまったのじゃと。そのとたん、今まで美しく晴れわたっていた空はにわかに曇り

雷鳴とともにものすごい雨が降ってきたのじゃ。そして、静かだった池の水面がにわかにふくれ

上がるように波が立ってきたかと思うと、とつぜんに大蛇が姿をあらわしたのだっのじゃ。


 しばらく大蛇は、おしも を見まもったが、まもなくして姿を消してしまったのじゃ。おしもは、このできごとに

こしもぬけたかと思うはどびっくりし、いそいで家に帰り、一部始終を父親にはなしをしたのじゃ。

 父親はおどろき、とるものもとりあえず与保呂の奥の池(芦の町)へかけつけると、池に向って「おまつ!おまつ!」

と呼びかけたのじゃ。すると、池の水面がさわぎ立ち、すがたをあらわしたのは、おしも が言ったとうりの大蛇であった。 


大蛇は、しばらくかなしそうに父親を見ていたが、やがて池の底へ姿を消してしまったのじゃ。何日かたったころ、

池の大蛇が何のうらみがあってか、村人にきがいをあたえているという話が人のうわさになりだしたのじゃ。事実、

与保呂の村は次々と大蛇の被害を受け、このままではどんなことになるかわからなくなったのじゃ。

村人たちみんなで、話し合いの上で池の主を殺してしまうより外にないということになったのじゃ、どういう方法を

使えばよいのか、みんな困ってしまったのじゃ。すると、日ごろはおとなしく親孝行で通っている一人の男が、

「昔、母親から聞いた方法がある。みごとに退治してみせる」といったのじゃ。 村人たちは困っていた時

でもあったので、この男にまかせることにしたのじゃ。

 
その男はひそかに、もぐさで大きな牛の形を作り、その一部に火をつけて池の中へなげこんだのじゃ。

大蛇はそれを見て、めずらしい、えものが来たとおもって、その大牛を一口にのみこんでしまったのじゃ。

もぐさの火は、大蛇のおなかの中でしだいに燃えひろがっていったのじゃ。すると一天にわかにくもり、

大雨がふりだした。池の中の大蛇は、おなかの中の火にくるしみもがき、のたうちまわったのじゃ。

池の水は大雨でしだいに水かさがふえて、ついにはこうずいとなってあふれだしたのじゃ。 やがて大蛇も

ながれだす水と共に急流に流され、息もたえだえとなったのじゃ。そして、大蛇はかりゅう

にあった岩にぶちあたり、たちまち体は三つに切れてしまったのじゃ。

 
村の人々はおどろき、おまつの化身をこのままにしてはいけないと、三つに切れた大蛇の頭は

奥の日尾池姫神社に、胴は行永の亀岩橋から少し下った どうたの宮 に、そして尻尾の方は大森神社に

祭ることにしたのじゃ。また大蛇を三つに切った岩を 蛇切岩 と名付けたのじゃ。それから後、今もなお不思議

なことには、日尾池姫神社の境内と、近くの宮の森一部には松の木が一本も生えないのじゃ。






と、言うことで… おまつとおしもの住む黒部から与保呂の奥の池まで歩いてみた!

おにぎり、お茶、緊急事態用ペーパー
準備万端!!
空腹にたえきれず出発前に完食!! 探検仲間のやっちゃん!!













出発前に村の掲示板をふと見ると「多門院のなぜなに」という張り紙を発見しました。

地元の方による手書きの多門院歴史案内図です。

パソコンで作りプリントアウトしてある案内板が多い中、事細かく手書きで作られたいる事に

強く感動しました。これぞ本当に伝えたい事を伝える原点ではないでしょうか?

また、作成日を見れば平成14年としてあります。もう何年もの間ここで現役の案内板という所

に村の空気をなんとなく感じました。

また、地元の愛着感が強く伝わってくる一枚でした。。

    








多門院の黒部からおそらくこの道であろう道を与保呂へ向け出発しました。

アスファルトの道がしばらく続き、舞鶴若狭道をくぐるとしだいに山道へと変

わっていきます。

昔はこのあたりにこの胡麻峠を越えるための、無料貸し出しのわらじ置き場

があったそうです。

いよいよ山道に突入です。

山道とはいえ歴史ある道だけに歩きやすい道です。


















高速道路の車の音も遠ざかり水の音と鳥の鳴き声が広がってきました。








しばらく山道を歩くと一ヶ所水が湧き出ている場所がありました。

地元の案内板によるとこのあたりに「一杯水」という真夏でも水が枯れない場所があり、昔の旅人や

作業員の喉をうるおしたそうです。 

ここが、そうなのでしょうか?

どんどん登っていくと、勾配もきつくなってきました。

「え〜おしもとおまつは毎日この道を通っていたのか〜」

すごい!!











突然、かなり広い平坦な場所に出てきました。地元の案内板によると
「胡麻寺跡?」としてあります。
多門院に11ヶ所あったお寺の一つでは?
としてあります。昭和30年初期頃は村人共同で焼畑農業で大根などを
植えていたそうです。

この平坦な場所には、昔の石垣が残っておりしばらくの間、
想像にふけっておりました。







平坦な場所からまたしばらく歩くと一つの尾根の頂上に出ました。ここが分かれ道

になっており、左に行くと胡麻峠を越え、綾部、若狭へと続きます。

僕達は、おしもとおまつの足取りをなぞる為、右に進みここからは下りになり与保呂

へと向かいました。















少し勾配のある下り道をいっきに降り平坦な所に出ると突然、鳥居さんが見えました。

そして水の音が大きく聞こえてきました。

もしかして、ここが、与保呂川の源流なのか?

と思い辺りを散策しました。
与保呂川の源流を発見!!

やっぱり、おそらく、たぶん、ぜったい、

ここが与保呂川の源流です。

幼い頃から慣れ親しんだ与保呂川の源流にこの年になり初めて到達しました。










清きふるさとの水という感じがします。

水はすこぶる冷たかったです。












与保呂川の源から川沿いに歩きやっと、おしもとおまつが毎日おとずれていた

池に着きました。
与保呂の奥の池(芦の町)です。

黒部を出発して、寄り道などをしながら約2時間30分ほどかかりました。

この距離と山道を毎日往復するとなると、それだけでそうとうな労力をつかって

しまいます。

車や自転車のない時代で自分の足だけが移動手段ならそれがまったくの普通

だったのでしょう。


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